カナタの中学受験本番を振り返るシリーズ。
5話目は2月2日。家を出発して、いよいよ、
第一志望校に到着するまでのお話です。
思えばちょうど一年前のこの日、
カナタはここに立っていました。
不安が高まる
学校の最寄り駅に到着すると、
同じ学校を受験するであろう小学生が
一団となって降りてきました。
私たちもその列に加わり、
小雪が降りしきるなか、学校に向かいます。
その間、カナタは妻と、合格後の話や
何点取れそうといった話をしていました。
その様子からは緊張感は見られません。
変な緊張はしていない方がいいとはいえ
これはリラックスというより
明らかに気が緩んでいるという感じでした。
そうして、不安だけがどんどん高まるなか、
学校へ到着しました。
本当に戻ってきた
ちょうど一年前のことです。
当時から、第一志望校が決まっていたので、
塾の先生に受験当日の様子を見に行くよう、
強く勧められました。
来年受験するときの雰囲気を体験すべしと
ということで、わざわざ学校を休んで、
私と二人で見に行きました。
ただ、カナタは当時かなり嫌がっていて
何とか学校まで連れてきたものの、
到着するなり帰りたがり、
遠くから様子を少し見ただけで、
速攻で帰ってきてしまいました。
それでも、当時、本当に受験できるか
カナタの学力に不安があったので、
こうしてその場所に何とか戻ってきた、
という感慨が私にはありました。
しかし、カナタにはそんな様子はなく
きっと一年前のことなど思いだすことも
なかったと思います。
せっかくの応援も
大勢並んだ大手塾の先生方の列にまじって、
私たちの塾の先生は立っていました。
最初に気づいた私は、
カナタを先生の元へ連れていきました。
ところが、雪の降る中、
わざわざ傘を置いて、手袋を外して
カナタを迎えてくれた先生に対して、
まるで別の世界にいるかのように
呆然と立ち尽くしたままでした。
先生が何を話しかけても
まともな返事はできませんでした。
今思い出しても、
あのとき何があったのだろうと思います。
結局、せっかく来てくださった先生の応援は
耳に届いていたかも怪しい状態で、
カナタは試験会場へと向かっていきました・・・。
つづく